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2008年03月07日

宮城大学で学会発表(感性工学会)

今日と明日、宮城大学で感性工学会が開かれます。私も発想ツールの「カード化の効能」というテーマで発表をいたします。特に智慧カード(TRIZベースの発想トリガー・カード)について、ユーザから寄せられた声を整理分析したものをお話しします。

TRIZシンポジウムでの報告とはまた違った観点で報告を(特に感性的にどのような意味合いを持つのかを)行います。

今回の発表は、小さな発見・気づきに近い報告を行う発表です。学会発表としては萌芽的なレベルなので、謙虚に学会参加者の方に少しでもヒントになれば、との思いでご報告したいと思います。


〜予稿集原稿〜


■タイトル(Title)
TRIZ(技術開発理論)の発想カード化事例にみるカード化の効能
Card Effect by Case of making Ideation Card-Tool based on TRIZ

■キーワード(KEYWORDS)
創造性開発、技術革新、教育
Creativity development, Innovation, Education


■本文
1.はじめに
TRIZ(技術的な発想を促進する理論)は、技術的思考に基づく発想支援の理論として世界的に知られている。しかし、その理論の実践のたびに、詳細な内容の書物の参照が必要となり、これがTRIZ の活用の上で大きなネックとなっている。宮城TRIZ 研究会ではこうした現場での課題を解決するツールの開発とその現場での適用を試みた。

2.現場での課題
技術者は、現場において実物(装置や部品)を前にTRIZで発想しようとすると、次の2 つを確保する必要がある。
(1)十分な明かり
(2)充分な時間
現場では、どちらも手に入りにくく、またそれらのない環境下で詳細な書物を参照する作業は大きなストレスとなる。また、あるアイデアに便乗して次々と派生アイデアを出すことの効能はブレインストーミング法にも謳われており、書物を参照しながらの発想作業は発想のリズム感とも言うべき「ノリ」に影響を与える。そこで、我々は、TRIZ理論を背景に持ちながらも、TRIZ を簡便に現場で使えるようにしたいと考え独自ツールを開発を試みた(図1)。

03_chiecard_and_manual.jpg
図1 開発したカード

開発に当たり、多くの議論やテストを試み、結果的には、カード形状となった。このカード(智慧カード)はTRIZ研究者や実践者の口コミなどを経て、先進的TRIZ ユーザーに使われ始めた。そこからカード化による効能と課題もまた見えてきた。

3.カード化の三つの効能
カードを用いたワークショップ等から『カード化することは、発想ツールとしてのよい効果がある』事がわかった。

(1)カードを繰る
「単純だけれども肉体的な動きをもった動作」
 ⇒「意識の切り替え」

(2)カードを見る
「目の前に見えるものが1 つしかない」
 ⇒「思考の集中」

(3)カードを並べる
「微妙な重要度の違いを、並べ方を工夫して表現」
 ⇒「直感的な知的能力の活用」

カードが持つこの3 つの動作は、発想のための頭の使い方を、やりやすくしてくれている。

4.カード化の限界
[ユーザは限定される]
ターゲットユーザを絞り込むことでカードは直感的に扱えるものになっている。ユーザ像に向けて大きく意訳することで、大幅に書籍にある膨大な説明を削ぎ落としても、本質のみを残すことができている。ゆえに、想定ユーザとは大きく異なる人にとっては、直感的な使いやすさは必ずしも保障できない。
[カード化に向く知、向かない知]
“多数の要素”スタイルの知はカード化に向く。“複雑なプロセス”スタイルの知は向かない。カード開発の際に多くの試作やテストプレイを行った。その結果、発想法には「カード化が向いている
もの」と「向いていないもの」があった。カード化、という視点で分類すると、要素群(≒順序を持たないリスト)は、カード化した際に、知的な促進が感じられた。プロセス(≒順序のあるリスト)は、カード化した際に非効率的になりストレス面が強調された。

5.まとめ
発想法のある種の部分は適切にカード化することで効果が高まると期待される。カード化の効能と限界について、詳細な調査を今後の課題としたい。

参考文献
[1]ダレル・マン『TRIZ 実践と効用 体系的技術革新』中川徹監訳、創造開発イニシアチブ、東京、(2004)
[2]アレックス・F・オズボーン『創造力を生かす<新装版>』豊田晃訳、創元社、大阪、(2008)
[3]ブレア・ミラー他『創造的問題解決―なぜ問題が解決できないのか?』弓野憲一他訳、北大路書房、(2006)
[4]デュナミス:「智慧カード」、http://braster.ocnk.net/product/9
posted by 宮城TRIZ研究会 at 10:42| Comment(0) | TrackBack(0) | Mi-TRIZ 2008年
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