TRIZに、9画面法という思考方法があります。時間軸と空間軸(あるいは概念空間軸)の2つで新しい発想をしていく方法です。TRIZや技術課題、というキーワードを超えて、面白い思考方法だと思います。一般のアイデア出しに活用できる方法だと思いますので、ぜひ使ってみてください。
(以下の、出展は、USITセミナーテキストです。私の理解・解釈に基づく表現ですので多分に不十分なものがある可能性があることをご了承ください。)
3かける3のマス目を書きます。(アイデア出しのときに使うマンダラートと同じ)
横軸は時間軸です。(10年前、今、5年後)
縦軸は思考対象物の範囲(スコープ)です。(上位・相当物・下位)
6[過去・上位システム] 3[現在・上位システム] 7[未来・上位システム]
4[過去・ システム ] 1[現在・ システム ] 8[未来・ システム ]
5[過去・下位システム] 2[現在・下位システム] 9[未来・下位システム]
全ての升目を埋めるとこのようになります。数字に発想のコツがあると感じました。
まず真ん中の列です。ここに現在のことを書きながら整理します。
中段に、今考えている対象物を書きます。
下段に対象物の下位システム(構成要素)を書きます。
上段に対象物の上位システム(対象物を包含して全体として機能を効能を提供しているもの)
次に左の列に移ります。これは過去について。主に10年前を念頭に。
中段に、対象物の10年前の姿を書きます。
下段に、その下位システムを書きます。
上段に、その上位システムを書きます。
最後は右の列です。主に5年後を予測します。ここは下記込む順番が違います。
まず、上段のマス、上位システムを書きます。手始めに将来社会のキーワードを書きます。そして、5年後の上位システムの姿を予測します。
次に、中段のマス、対象物の将来の姿を描きます。結局ここを書きたいわけですが、ここにいたるまでの7つのマス目が優れた発想を広げます。
さらに、下段のマス、対象物の将来の姿の下位システムを描きます。簡単に言うと対象物の将来の姿を構成する構成要素やそれが持っている諸機能です。
ここがさらに、対象物の将来の姿を色鮮やかに描き出し、アイデアが具体的になります。
以上、9画面法という手法を紹介しました。ある意味、発想をめぐらしているときに自然と使っている頭の使い方です。それを意識的にすることで効果的に着想を得ることができます。
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例:大学の休講を知らせる掲示板、を追記部分で考えて見ます。
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現在の対象物(2006年)
大学の中央にある休講をしらせる掲示板
現在の下位システム
電子データを表示するディスプレイ
表示板の保護カバーガラス
装置を冷却するファン
電子データを入力するケーブル
電子データをインプットするPC
電源装置
現在の上位システム
掲示板
講義の休講を申請する講師
それを受け取り受理して承認する事務職員
それを掲示データする作業をする職員(同一人物のことも)
それを見て行動を変更する学生
過去の対象物(1996年)
紙を張り出す掲示板
過去の下位システム
掲示するビラ
画鋲
掲示面(緑の布を張った木板)
鍵のかかるガラス扉
過去の上位システム
掲示板
講義の休講を申請する講師
それを受け取り受理して承認する事務職員
それを掲示する作業をする職員(同一人物のことも)
期間が終わったものを確認してはがす職員(同一人物のことも)
それを見て行動を変更する学生
掲示板の前の一段高いステージ。(職員が掲示物交換作業であがる)
そして、ここから将来(5年後、2011年)のシステムを考えます。
将来の上位システム
まず将来社会のキーワードは、
・少子化で学生の大幅減。
・文科省の交付金がへり事務経費の大幅抑制。
・多様な属性の学生の存在(社会人学生、身障者、高齢者、外国人)
・地域市民への公開講座
・知的エンターテイメント産業の台頭
・人口減少
・省資源、省エネ、環境適合
・校舎設備の利用用途の拡大、利用時間の拡大
・わかりやすさ、効率、ユーザーフレンドリー
ぐらいが上げられそうです。未来の掲示板の上位システムとしては、
掲示板
講義の休講を申請する講師
それを受け取り受理して承認する事務職員
それを掲示データする作業をする職員(同一人物のことも)
それを見て行動を変更する学生
となりますが、各々の状況は変わっています。
まず、講師は今よりももっと多様でフレキシブルな勤務体系をとるでしょう。客員教授などに人気講師がたくさん増えます。たとえば優秀なスポーツ選手や世界的なボランティア組織のリーダなど。大学のシステムにあまり慣れていない人、一年限りの講師がたくさん増えます。そうすると突然の休講の要望や毎週同じ時間に講義するという制度そのものが柔軟さを求められます。また、学生のほうも、講義の選択にバラエティーが増すと、一人の人がいくつもの掲示板(経済の3年の掲示板、工学の1年の掲示板、心理学の2年の掲示板)の情報を必要とすることになります。
多様な学生や市民が利用するようになるとますますユーザーにとって認識のしやすさが必要になります。これらの状況下でも使いやすい掲示板の上位システムであるでしょう。
で、いよいよ、未来の掲示板です。
上記のことを考えていなくてもいくつかアイデアは出ますが、ここまでくるとかなりアイデアが自然と出ます。まず、利用者としては、掲示板に自分が近づくで自分に合わせた表示内容に切り替わって欲しいですね。いくつもの掲示板を行ったりきたり、ではなく。これにはRFIDつきの学生証を掲示板が認識し、個人IDから必要な情報を掲示してくれる。本日の突然の休講に対しては、授業に出席をするためにここまで来たことを掲示板が認識して、出席を一回分カウントしてくれる。そして講師に送られる。(そして後の補講動画をWEBからダウンロードできるパスワードがその生徒には付与される。生徒は補講分は大学に行かずに受けることができる)
また、突然の時間変更を講師が望んだ場合に受講者全員に一斉確認をできる仕組みがつくことも考えれます。あまりに生徒が多いと無理ですが、小規模ゼミなどであれば、10人中6人が時間変更をYESといえば、講師の裁量で時間変更をできる。(逆に生徒から時間変更の依頼があれば、60%以上の希望者数になると講師は時間変更をうけいれないといけない。)という仕組みが考えられます。リアルの掲示板というよりも掲示板システムが、ですね。
また電子データを蛍光掲示板で表示することの電力もカットし、大きな白い壁面に、照明スポットがあたり影絵のようにそこに情報が表示されます。普段はライトが消えているか、建物内の照明として使われています。
こうなってくると掲示板は駐車場にでも食堂のテーブルにでも、あるいはトイレの壁面にでも表示できます。(スポットライトがその分必要になりますが。)学生の利便性は高くなりそうです。また、講義時間を忘れて食堂で話している学生にそれを認識させることもできそうです。外国人の学生には望む言語での表示もさせることはリアルな掲示板に比べて比較的容易です。
そして、将来の下位システム。
まず、学生の個別IDを認識する仕組み。
掲示板エリアにリーダ
学生の学生証に無線ID
それから、個別の情報を編集し、個人用掲示データを作成するPC(英語や中国語へも変換する)
それのデータをスポットライトの前にある自動可変投影フィルターに送る仕組みとフィルター装置
学生の携帯、講師の携帯からアクセスできる時間変更交渉用WEB掲示板サイト
休講でも大学に来てしまった学生の出席認定を行うシステム(学生のIDを読み取って)
こういったものが必要になります。いずれも既存のシステムで十分にできます。高度な統合力と情報処理力は必要でしょう。
以上、簡単に掲示板の5年先を発想してみました。これが必ずしも正しいとはいえませんが、9画面法を用いることで比較的スムーズに未来の掲示板を描くことができます。
(かつてローソンで未来のコンビニというアイデア募集がありました。アイデアプラントで応募しました。やはりそのときに同じように思考を展開していた、といま振り返るとそう理解できます。それを効率的にやる、という意味合いが強いと思います。特に7将来社会のキーワードを上げる、という部分を明確にしている点が優れているとおもいます。)
2006年07月14日
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