TRIZとブレインストーミング(及びCPS)の創造プロセスの両方を使っていると共通点と違いが見えてきます。その比較からいくつか考察を行ってみます。
まず、TRIZは創造のプロセスとして以下のような構成を持っています。(おもにUSITをプロセスの代表格として。)
・問題の定義
・問題の分析
・アイデアの生成
・実現(←TRIZの外)
問題の分析におおくの労力を使っていることが特徴的です。その分析をしていくと、それだけかなりアイデアが浮かんできます。それくらい、良い分析ワークを行います。
なお、この全体を抽象化→具体化と構造付けています。
ブレインストーミング及びCPSはこうです。(主にシネクティクスのプロセスを代表格として)
・問題の定義
・アイデアの生成
・アイデアの収束
・行動計画
大きな構造としては似ています。しかし項目ごとにみると違いがあります。特に興味深いのは、問題分析と発散(アイデア生成)のフェーズです。
問題分析:
TRIZでは、問題分析を行うために非常にパワフルな思考ツールがあります。その問題分析をじっくり行っていくだけでかなりの量のアイデアが発想できます。一方CPSのほうは、その点はかなり定性的。これは、TRIZが技術システムを対象にしているために、具体的に分析ツールをデザインできているのに対し、CPSは広くアイデア一般を扱います。主にビジネスアイデアが多いと思いますが、それだけに限定しません。なので、いろいろな対象で使えるように広くて、ややゆるめの問題定義手法が用意されています。
発散(アイデア生成)
ブレインストーミングでは、目標を見定めてはいるものの、非常に広い方向へアイデアは発散していきます。突飛な発想を歓迎する(普通でないアイデアを歓迎する)などが多様性を促進するために入っています。三人寄れば文殊の知恵。三人の異なる観点で広げれば非常に広いアイデアが獲得できる、といったシンプルなルールだけをもったアイデア会議の方法です。一方TRIZは「コンテンツ(技術的ブレークスルーの40パターン)」を持っています。またどの解が適するのかを、問題の構造を分析することで示唆してくれます。そのため、40のうちの4つ程度のブレークスルータイプが今回の問題に適している可能性が高い、というヒントを得て、集中的にその方向についてのアイデアを出します。TRIZはそのため、使ってみるまでに多くの時間とテキストのような情報が必要である点が重たいと感じられることが多いようです。
以上です。
TRIZとブレストでは大きく違うのは解決策空間を埋めつくす選択肢(アイデア)をどのように担保するか、という点だと思います。TRIZは、優れた膨大な事例を調べて分類してブレークスルーの発想を引き出すパターンリストをつくった。CPSは、複数人の多面的な思考を利用して充分に解空間を埋め尽くすためのアイデア会議ルールをつくった。そういうことではないか、と思います。
■追記:
収束のフェーズについても興味深い違いがあります。しかし、どちらの手法も収束そのものについての言及が非常にあっさりしています。ここについては、更に研究の余地があると思います。
追記2:
TRIZは専門道具であり扱う対象が限定。
ブレストは汎用道具であり扱う対象が千差万別。
汎用道具であるためには、シンプルでなくてはならない。
汎用道具であるためには、枝葉末節(と個別専門性)はおとし本質的な効果に絞らないといけない。
包丁でいえば、なんにでも使える汎用の包丁がある一方でかつらむき専用の包丁、刺身専用の包丁がある。
汎用包丁はなんにでも使える。なんにでも使える代わりにどれに対しても一定の作業労力がかかる。
専用包丁は特定用途に非常に効果的に使える。効果的である代わりに他の用途においてはほとんど使えない。
ブレストは汎用の包丁であり、TRIZは刺身用包丁である。と比喩をおいてみると考えやすいかもしれない。
TRIZはITソフトには使いづらい、という声が多いが、それは、刺身包丁でかつらむきをしているからとなる、比喩を延長すると。このとき、かつらむき包丁が無いならば、お刺身用よりも汎用包丁がいい。
そういう比喩になる。
では、、、そのことが更に示唆を与えている。
対象が限定されれば、高い効果を発揮できる道具に専門深化させることができるのか、ということ。
つまりブレストを「○○専用ブレスト」と発展させるならば、既存のブレストのルールを加工してより効果的なルールを構成することができるのだろうか。
これについては、考察の材料があるだろう。たとえばIDEOの本の中にブレストの7つのルールがある。それを「デザイン専用ブレスト」と位置づけてみる。汎用と専門ではどういうさがあるだろう。その差を明確に。そうすることで、そのほかに○○用ブレスト、というときに修正ポイントが分かる可能性がある。
いくつかの分野でブレストを専門化したものをリストにしてみたい。
2008年01月06日
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