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2008年12月10日、大田区でIDEA社(TRIZコンサルティング企業)が開催するTRIZセミナー(※1)を取材してきました。
一般的に、企業の主催するセミナーというのは、販売製品のPRや閉塞的な空間で営業を展開されるのではないか、と心配になりますが、IDEA社のセミナーには、非常に「知識の学習」ということにフォーカスのあてられた、公的なセミナーに近い性格のものでした。
彼らは、じっくりと全国の企業にTRIZを知ってもらう姿勢で活動しており、TRIZの普及活動としては、非常にニュートラルで有効度が高いと感じました。
さて、内容についてですが、今回は、3つの内容がありました。
(1)TRIZ概要
(2)セマンティック(意味)検索技術
〜(ソフトウエア紹介ベース)
(3)TRIZの実績
講師は主に、IDEA社の川合氏。全国での同社セミナーのほとんどは、川合氏がお話しされています。
難解といわれがちなTRIZ理論を、極めて平易に分かりやすい比喩を交えて2時間前後で説明し、休憩や簡単な発想的なミニワークもありました。
そうした川合氏の講義でも、やはり、TRIZ理論の概念や構造を説明する部分は、難しく感じるところがあり、初心者が一度聞いただけでは、100%の理解は出来ないとおもわれました。
集中して聴講して、60〜80%が理解できれば良い方だと思われます。
「TRIZは、筋がいい手法なのは分かったが、具体的によくわからなかった」という学習者の声を他のセミナーでは聞きますが、川合氏のセミナーは「具体的な部分も6割ぐらいわかった」といわせるレベルであり、初心者向けの講師としてはかなりのレベルです。
一方、会場をざっと見まわしてみると、聴講者としては、企業の技術者(30代前半の中堅クラスから、トップレベルの方まで)が多いように見えました。会話からすると、知財系の部門の方もいらしたようです。全部で、ざっと40名程度でした。
全体で2.5時間の講義のあと、質疑応答がありましたが、会場から、さまざまな質問、なかには、かなり鋭い質問も、ありました。
内容について、簡単にまとめますと、
(1)TRIZ概要、では、発明原理の成り立ちと活用の仕方の説明、技術の進化トレンドと発明標準解の関係と活用の説明、がありました。本で読むよりかなり分かりやすかったです。
(2)については、TRIZそのものではなく、最新のTRIZソフトウエアであるゴールドファイアーイノベータがもつ、意味検索の機能、TRIZソフトとしての機能、がありました。個人的には、人間の複雑な知的作業(発想するための材料を蓄積、分析や分類するような作業)を意味検索の機能が担ってくれていて、便利そうだと感じました。
(3)TRIZ実績では、国内の主要な活用事例や世界的にもTRIZ高度ユーザである韓国企業の投資効果を紹介されていました。普通、まとまった資料がでてこないタイプ情報なので、興味深いデータでした。
ソフトウエアを触れる実機が2つほどあり、セミナー終了後は、興味のある人が10名前後残って、説明員をつかまえて実際に操作していました。アンケート記入があり、コンサルの活用などの検討度をたずねるものがある点は、企業主催セミナーらしい感じがしますが、裏面にはしっかりと詳しい個人の取り扱いポリシーが明記されており、しっかりとした企業姿勢が感じられました。
終了後、メイン講師を務めた川合氏に3つのことをたずねてみました。
筆者
「分かりやすい講義をされましたが、初心者にTRIZの説明をするコツはありますか?」
川合氏
「TRIZは長い歴史もあり、体系のしっかりとした文字通りの理論なので、独特の言い回しや、専門用語が結構当たり前のように出てくるんですね。勿論、正式な用語を覚えていただければ一番なんですが、それがかえって理解を難しくしてしまっていることが結構あるんです。だから出来る限り分かりやすい言葉に置き換えて話すようにしています」
筆者
「TRIZは多数の思考ツールを持っていますが、実践において、有効度の高いものを3つあげるとしたら、なんですか?」
川合氏
「「矛盾を妥協せずに解決する方法」「技術の進化パターンを活用する方法」「異業種の考え方を利用する方法」の3つがお勧めですね。それぞれに全く違う切り口で問題へアプローチするんですが、使い方そのものはどれもシンプルで、イメージとしては先輩や同僚からアドバイスをもらっているような感じです。抽象的なヒントをくれたり、時には専門的な知識を教えてくれたりもするんです。」
筆者
「TRIZの活用がうまくいきやすい企業、というのはありますか?あれば特徴を教えて下さい」
川合氏
「TRIZ導入の目的というのは、企業によって様々ですので一概に比較は出来ないのですが、活用がうまく進んでいるところにはいくつかの共通点がありますね。まずは人。具体的には推進担当者であったり、実際に実務でTRIZを使う人になるんですが、熱意がとにかくスゴイ!TRIZへの期待もあるんでしょうが、そもそもの問題解決にかける意気込みが違います。やる気のある人がツールを本気で使いこなすわけですから、当然結果につながります。もう1つは環境ですね。TRIZに取り組める環境、あるいはそれを認めてくれる上司ですね。そして結果を評価する基準が明確であれば・・・あとはやるだけですね。」
ノウハウに近い部分を訪ねたにも関わらず、気さくに答えていただきました。同社のTRIZのセミナーは、同社WEBサイトから見ることができます。近年は良い本が増えていますが、発想スキルというのは、書物よりも直接、専門家から聞く方が、かなり分かりやすい傾向があります。
TRIZの本をしっかり読んでから、と思っている方は、本を読み切る前に一度セミナーをお聞きになられてもいいかもしれません。
(※1)TRIZセミナー
「TRIZ×意味検索エンジンによる技術問題解決支援セミナー」
開催日 :2008年12月10日(水)
開催時間 :14:00〜17:00
開催地 :東京:蒲田
会場名 :大田区産業プラザPIO 特別会議室
主催 :株式会社アイデア http://www.idea-triz.com/index.php
[取材] 宮城TRIZ研究会 i