宮城TRIZ研究会からのお知らせ
宮城TRIZ研究会では「TRIZセミナーに行ってきました」レポートを公開しています。国内におけるTRIZの多面的な発信と情報共有に資する活動となるべく、宮城TRIZ研究会のメンバー、および、一般の方がお書きになれたレポートを、一定の判断基準の下、評価させていただき、宮城TRIZ研究会の責任のもと、公開しております。
今回は、新潟のTRIZに造詣の深い方(M氏)から、レポートを寄せていただきました。
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【タイトル】
株式会社アイデア様主催、中川 徹 教授ご指導の、USIT実践トレーニングセミナーに行って参りました。
[執筆] 新潟県 研究員M 47歳
【本文】
私のUSIT実戦セミナー参加は2回目なのですが、リーマンショック後初めてのセミナーということで、参加人数は今回少ないものでした。
しかし、ある自治体の研究員の方が参加しておられて、私個人にとっては最高のセミナーになりました。地方自治体レベルの研究機関でも、USIT/TRIZは強力なツールになると言うことが確認できたからです。
良く名前の知られた企業だけでなく、とくに開発担当部署を分けていない企業からも参加者はありますので、たいがいの背景の技術者でUSIT/TRIZは有効なツールであるといえます。
中川 徹教授が講師を務められるセミナーは、2日間で構成されています。
セミナーの最初に日程の説明があった後、このセミナーでの守秘義務について約束をします。それは、実際職場で抱えている問題をセミナーに持ち込む事があるからです。
持ち込み問題がなければ、世間で話題の事項について練習問題にしたりしますが、今回は持ち込み問題があり、それを解くことになりました。
USITは、TRIZのエッセンス、すなわち@問題をシステムとしてとらえ抽象化A理想的解決状態をイメージBいくつかの発明の定石に沿ってアイデアを創出Cアイデアの群れを具体化して解決策にするプロセス
を踏襲する発想法です。
USITの特徴としては、もとのTRIZ、SIT法やASIT法に無い、ロジカルシンキングのプロセスが丁寧に組み込まれていることがあります。そのプロセスは中川教授が改良されていて、きちんとなぞると、それだけで問題が解けてしまうように思えるほど過不足がありません。
セミナーはTRIZ初心者の来講も想定して、USIT/TRIZのイロハから始まりますので、何の基礎知識が無くても受講して困ることはないでしょう。
そのUSITを講義とグループ実習によって身につけ、実際特許になりそうだというアイデアまで出してしまえるのです。
少なくとも私の参加した2回のセミナーで、2回とも「この線で実際やってみます」という声が出ています。参加メンバーは必ずしも特定の研究開発分野だけの人ではないのですが、さすがにすごい、と思える方ばかりで、始めて接したという分野でも多数のアイデアを出されています。
ですから、このUSIT実践セミナーでは、守秘義務についての約束が必要ですし、かつ参加の価値があります。
私は株式会社アイデアさんのUSIT実践セミナーに2回参加しています。
それは、USITという、TRIZを学びやすくした手法でも3回セミナーで学んだ方が、確実に身に付くという中川教授の言葉に沿ったものです。
TRIZを既に実践されている方、自習されている方には、講義の部分が重複した知識になるかも知れないという嫌いは確かにあります。あるいは何回もセミナーに参加する必要はないと思われるかも知れません。しかし、それは様々な背景の受講者が集まる以上、致し方ないでしょう。また、USITの知識そのものが利益を生む訳ではないという言葉もまた、真であると思います。
それでも私には、参加する価値がありました。
私は参加した2回のセミナーで、2回とも異なるテキストをいただいています。中川教授が、いつもUSITの改良を進めておられ、それをテキストに反映されているのです。
不遜な言い方ですがそのテキストから、TRIZを広めて、創造的アイデアをもっと創り出せる日本を
と奮闘される中川教授のお姿が、職場でTRIZを使おう と声を出した自分と重なるように思えました。
USIT実践セミナーでは、講義を除くと8〜10時間ほどのグループ討議で
一つの問題に3つほどの解決策コンセプトを創ります。3〜5人で構成されるグループでは、手法の説明を受けても少し受け取り方に違いがあったりしますので、その確認・まとめに結構時間がかかっていました。慣れれば討議時間は、4〜6時間になるでしょう。
TRIZやろう!と声を上げてもなかなか聞いてもらえないと思う方には、TRIZのエッセンスの中に仲間をさりげなくおいて、解決アイデアまで導くヒントも得られるのではないでしょうか。USITは簡便な分、そのような試みに適していると思います。
実際セミナーに参加された方の中には、皆がTRIZを身につけなくても良いとおっしゃる方もおられました。例えば、TRIZマスターがひとり職場内をブラブラして、問題を解決に導いては去ってゆくと良いとか。
その「ひとり」を育成するには、USITは有効であると思います。
TRIZは膨大で、手法・知識におぼれてしまう、と言う方にもUSITからの実践が有利だと言えます。それは「多くのTRIZ支援ソフトが、どうしてこういう手順を要求するのか?」それがわかるからです。
USITが、ロジカルシンキングのプロセスを組み込んであるというのは、この点に生きてきます。USITのプロセスを基本にして、支援ソフトの動きが見えてきます。
2000年頃と違って、発明支援ソフト(TechOptimizerやGoldfireInnovatorなど)は丁寧に日本語化されています。しかし、直感的に扱うと言うほどの設計にはなってはいないと思います。それだけTRIZは多様な解決ルートを持つと言うことですが、USITセミナーを受けると、TRIZのエッセンスがわかりますから、支援ソフトをより便利に使えることになると思います。
USITはもともと、TRIZのように複雑な問題の解決を扱わない方法とされています。
私はこの特徴を、TRIZ入門者に有利と思いますが、一方でこの特徴をUSITの限界と評される方もおられます。たとえばアイデアが、小さな範囲に限られるという限界です。
またUSITでは、抱える問題を整理してある一つの部分を取り上げますから、実際の製品開発に応用するには力不足と感じるもの一理あるようにみえます。
TRIZホームページにあるように、発泡ノズルだけを改良しても樹脂製造工程全体を最適化は出来ないのじゃないか?それは小さな問題しか解けないUSITの限界だろうというご意見があるわけですね。
しかし、私は限界とは思いません。複雑な問題というのは、TRIZでは9画面法のように整理して捉えることが出来るからです。問題を整理した上で、一点ずつ突破してゆき、突破の連鎖を起こせば良いだけのことです。
それこそTRIZのいうことろの「分離・分割」原理ですね。戦術的擁護では分進合撃・各個撃破です。
畑村洋太郎 東京大学名誉教授の実践されている課題解決法でも、「課題の全体構造を理解していない技術者は非常に多い」と指摘されています。つまり、複雑な問題が解けないというのは、USITという手法の問題ではなく、自分の抱える問題が全体としてどのような構造を持ち、互いに関連しているか認識できたいないことによるのだと、私は考えます。
セミナーに時間の余裕が少しあると、問題の分析がくわしくできます。
休憩時間にでも問題の背景について話をすると、聞いたこともなかった世界がそこにあることには驚かされます。そして、その問題のほんの一端でも解決できるかのような経験が出来ること、それにはかなりの興奮を覚えます。
最近では、日本国内で確立した技術を、海外の工場で使って生産を行う動きが盛んです。
その際、海外技術者を日本の工場に呼び寄せて、研修してもらってはいないでしょうか。
発明的発想も技術なのですから、「発想する現場の雰囲気」を経験することは、自分の組織に発明的発想を導入するため、当然必要なことであるとセミナーに参加して感じました。
[執筆] 新潟県 研究員M 47歳
〜[文責]〜
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