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2009年09月14日

TRIZ学習プロセスをTRIZ技法で最適化できないか?

TRIZシンポジウムで示唆を得て、また、各個人の方とお話をして、技法としてのTRIZ,その学習プロセスを、再構築するヒントがうっすら感じられました。

理想解をもちいて発想すれば、TRIZはどうあるべきか?
としばらく考えていました。
(アカデミアの議論とは全く違い、そういう視線の議論よりも
 レベルが低くて恐縮ですが)

それから、「究極の一人像」(≒ペルソナ)で
それらの勉強の仕方を、きっちり具体化したい。とも。
(これは、デザイン開発の時の概念です。)

そんなメモでした。
posted by 宮城TRIZ研究会 at 10:34| Comment(0) | TrackBack(0) | TRIZとは&TRIZに関する考察

2008年10月15日

ガイデッド・ブレインストーミング

先日、TRIZシンポジウムでガイデッド・ブレインストーミング、という言葉を聞きました。産能大の黒澤先生にお話をお伺いしたときのことです。ガイドされたブレスト。いいコンセプト、ですね。

産能大のGBツールキットをまだ見たことがありませんが、きっとおもしろい、優れたナレッジセットだとおもいます。11月からASP提供されるそうです。楽しみですね。

それはさておき、すこし、ガイデッド・ブレインストーミング、ということについて考えてみたいと思います。

ブレスター(ブレインストーミング・マスター)はカードゲーム形式ですが、一種のガイドされたブレスト、にはいるかもしれません。また、プロのファシリテータが入るブレストも、ガイドされたブレスト、という範疇にはいるかもしれません。広義では。

狭義にいえば、シネクティクスの数段階にわけたブレインストーミングや、方向性づけと適度な粒度にきりわけた項目をアイテマイズ発想していくようなスタイルのアイデア出しが、それに当たると思います。

ブレストのルール自体は、創造的な心理様式の活用のためのガイドライン、だと私のプロジェクトチームでは考えています。ブレストをする、というのは、一種の創造的な心理様式をガイドされた活動をする、ということなので、ガイデッド・ブレインストーミング、というのは、重複気味な概念になるか、と厳密に考えればおもいますが、ブレストのルール、ということで、心理様式(あるいはメンタルアティテュード)はガイドされていますが、発案していくそのもののプロセスは、ガイドされておらず、参加者にゆだねら得ています。するといいこと、してはいけないこと、だけが示されていて、どういう方向にすすめ、なにをせよ、ということがないのです。

なので、ガイデッド・ブレインストーミングとしては、手順やプロセス的な面をガイドするブレスト、とかんがえれば、非常に理のあることだとおもいます。

ブレストに限定せず、ガイデッド・アクション、という行為の本質はなんだろう、としばし考えてみていました。次のことがあげられるかもしれません。

ガイデッド・アクションの3要素(MiTRIZ私案)

1.狭さ
エリアを制限されている、あるいは、取り得る選択肢・自由度が狭い
(これは、発想にとっては良いこと。制限は創造性を引き出す)

2.方向性
進むべき方向が、明示的に付与されている
(明確なゴールは、自発的な力を引き出しやすい)

3.手順
プロセスは、本質のみを残したシンプルな単動作を1単位として、その並んだものとして提示される(プロセスの分岐は非常に少ない)
(シンプルにすることで、短時間で熟達する)


ある種の、知識学習ゲームなどは、こうした3要素を根底にもっているように思います。
posted by 宮城TRIZ研究会 at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | TRIZとは&TRIZに関する考察

2008年01月06日

TRIZとブレインストーミングの違いを考察

TRIZとブレインストーミング(及びCPS)の創造プロセスの両方を使っていると共通点と違いが見えてきます。その比較からいくつか考察を行ってみます。

まず、TRIZは創造のプロセスとして以下のような構成を持っています。(おもにUSITをプロセスの代表格として。)
・問題の定義
・問題の分析
・アイデアの生成
・実現(←TRIZの外)

問題の分析におおくの労力を使っていることが特徴的です。その分析をしていくと、それだけかなりアイデアが浮かんできます。それくらい、良い分析ワークを行います。
なお、この全体を抽象化→具体化と構造付けています。

ブレインストーミング及びCPSはこうです。(主にシネクティクスのプロセスを代表格として)
・問題の定義
・アイデアの生成
・アイデアの収束
・行動計画

大きな構造としては似ています。しかし項目ごとにみると違いがあります。特に興味深いのは、問題分析と発散(アイデア生成)のフェーズです。

問題分析:

TRIZでは、問題分析を行うために非常にパワフルな思考ツールがあります。その問題分析をじっくり行っていくだけでかなりの量のアイデアが発想できます。一方CPSのほうは、その点はかなり定性的。これは、TRIZが技術システムを対象にしているために、具体的に分析ツールをデザインできているのに対し、CPSは広くアイデア一般を扱います。主にビジネスアイデアが多いと思いますが、それだけに限定しません。なので、いろいろな対象で使えるように広くて、ややゆるめの問題定義手法が用意されています。

発散(アイデア生成)

ブレインストーミングでは、目標を見定めてはいるものの、非常に広い方向へアイデアは発散していきます。突飛な発想を歓迎する(普通でないアイデアを歓迎する)などが多様性を促進するために入っています。三人寄れば文殊の知恵。三人の異なる観点で広げれば非常に広いアイデアが獲得できる、といったシンプルなルールだけをもったアイデア会議の方法です。一方TRIZは「コンテンツ(技術的ブレークスルーの40パターン)」を持っています。またどの解が適するのかを、問題の構造を分析することで示唆してくれます。そのため、40のうちの4つ程度のブレークスルータイプが今回の問題に適している可能性が高い、というヒントを得て、集中的にその方向についてのアイデアを出します。TRIZはそのため、使ってみるまでに多くの時間とテキストのような情報が必要である点が重たいと感じられることが多いようです。

以上です。

TRIZとブレストでは大きく違うのは解決策空間を埋めつくす選択肢(アイデア)をどのように担保するか、という点だと思います。TRIZは、優れた膨大な事例を調べて分類してブレークスルーの発想を引き出すパターンリストをつくった。CPSは、複数人の多面的な思考を利用して充分に解空間を埋め尽くすためのアイデア会議ルールをつくった。そういうことではないか、と思います。




■追記:

収束のフェーズについても興味深い違いがあります。しかし、どちらの手法も収束そのものについての言及が非常にあっさりしています。ここについては、更に研究の余地があると思います。

追記2:

TRIZは専門道具であり扱う対象が限定。
ブレストは汎用道具であり扱う対象が千差万別。

汎用道具であるためには、シンプルでなくてはならない。
汎用道具であるためには、枝葉末節(と個別専門性)はおとし本質的な効果に絞らないといけない。

包丁でいえば、なんにでも使える汎用の包丁がある一方でかつらむき専用の包丁、刺身専用の包丁がある。
汎用包丁はなんにでも使える。なんにでも使える代わりにどれに対しても一定の作業労力がかかる。
専用包丁は特定用途に非常に効果的に使える。効果的である代わりに他の用途においてはほとんど使えない。

ブレストは汎用の包丁であり、TRIZは刺身用包丁である。と比喩をおいてみると考えやすいかもしれない。

TRIZはITソフトには使いづらい、という声が多いが、それは、刺身包丁でかつらむきをしているからとなる、比喩を延長すると。このとき、かつらむき包丁が無いならば、お刺身用よりも汎用包丁がいい。

そういう比喩になる。


では、、、そのことが更に示唆を与えている。

対象が限定されれば、高い効果を発揮できる道具に専門深化させることができるのか、ということ。

つまりブレストを「○○専用ブレスト」と発展させるならば、既存のブレストのルールを加工してより効果的なルールを構成することができるのだろうか。

これについては、考察の材料があるだろう。たとえばIDEOの本の中にブレストの7つのルールがある。それを「デザイン専用ブレスト」と位置づけてみる。汎用と専門ではどういうさがあるだろう。その差を明確に。そうすることで、そのほかに○○用ブレスト、というときに修正ポイントが分かる可能性がある。

いくつかの分野でブレストを専門化したものをリストにしてみたい。
posted by 宮城TRIZ研究会 at 06:57| Comment(0) | TrackBack(0) | TRIZとは&TRIZに関する考察

2007年12月06日

TRIZ Principles for Information Technologies

IT分野のTRIZが登場しつつあります。

"TRIZ Principles for Information Technologies"
(『IT技術のためのTRIZ発明原理』)、
Umakant Mishra 著 (インド) 、
Technical Innovation Center, ドラフト版、2007年4月


詳しい情報は、TRIZの第一人者、中川先生(大阪学院大学 教授)のTRIZホームページにあります。

そこから一部を引用します。

[中川の所感]: 私はちょうど1年前にこの本の最初の3章を読む機会があったが、
このTRIZCON2007 で初めてその全体を目にした。
IT/ソフトウェア分野にマッチするように、TRIZの発明原理を
説明、適応、拡張、変更している著者のやり方は、非常にすばらしいと思う。
この本を読めば、あなたがIT分野でよく知っているさまざまな技術革新や改良が、
TRIZの発明原理でうまく説明できることを、分かるだろう。

(引用ここまで)

中川先生の言葉から、このIT版TRIZの著書が良い出来であることがうかがえます。私もシンポジウムの席などで、ざっと拝見したのですが、システムやソフトウエアなど、システム開発のプロマネ、統括的な立場のSEにとって、とても貴重な「ITシステムの開発の技術的ブレークスルーのパターン集」になると思いました。あるいは、実際に現場で打ち合わせをするような、日々の仕事でシステムデザインを直していくような実践的SEにとって、「どうすればクライアントのこの要求をシステムに取り込めるかな」とアイデアを出す段階で効果的になる書籍だと思いました。

(メカニカルの分野で、開発の工夫を発想するために、オーソドックスなTRIZを活用することと似ています。)


また、中川先生はこうも、続けています。以下引用します。

日本でわれわれは、本書を日本語に翻訳し、
出版したい (適当な出版社から出版してもらう) という計画をもっている。
私は著者とメールをやりとりしてきて、本書を
(著者のもともとの意図である) (小さな) TRIZ市場にではなく、
ずっと大きなIT分野向けに出版することを薦めてきた。

(引用ここまで)

日本語への翻訳に取り組んでおり、チーム作り、有望な出版元の探索など、中川先生をして東奔西走せしめるだけのチャレンジ課題のようです。ぜひ、TRIZ分野にとどまらず、日本の多くのSEが、世界的に秀でたレベルの知を簡単に活用できるよう、優れた翻訳本を出版されることを切望しております。

IT版の発明原理で優れたアイデア出しを短時間でできるようになれば、既存のパターンには当てはめられないごくわずかのイノベーティブな問題に、「考える時間を集中投下」できるようになると思います。

すこし、区切って表現するならこうなるのかな、というものを以下、述べます。

■レベル1の課題■
IT版TRIZをつかわなくても、簡単に解ける課題
 ↓
手法を使わないで、すぐ、解決する。

■レベル2の課題■
なかなか解けずに、試行錯誤や他の開発事例を沢山見てヒントをもらってようやく解法が見出せる課題
 ↓
IT版TRIZを使って、効率的に、解決する。

■レベル3の課題■
どうやっても、既存の事例などがヒントに出来ない・大変チャレンジングなトップレベルの課題
 ↓
IT版TRIZを使って、解ける部分を効率的に解き進める。
TRIZですら範疇に含めることの出来ない、「トップ1%の課題を考えることに、たっぷりと時間を使う。

IT分野のエンジニアの方に、簡単にこの知識セットを説明するならば、こういうツールだ、と表現するべきものなのかも知れません。


なお、中川先生のページに、このミシュラ氏のサイトへのリンクがあります。この本の出版、期待して待ちたいですね。
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2007年12月02日

困ることを増やす要素をリストアップしていくと自然とアイデアが出る。

アイデアの技法、それも技術系の課題につよいアイデアの技法として、TRIZの一部の手法をご紹介します。(補足:それは技術的なものだけではなく、ビジネスの課題、組織運営の課題などでも、同様の思考方法が有効に使えます。)



zokusei_bunseki.jpg


この方法は、一見、シンプルな方法です。右肩上がりのグラフ、右肩下がりのグラフを書いて、その図にマッチする属性を挙げていく。そんな方法です。

しかし、実際にやってみると、この方法は非常に、アイデアを生むことを実感する方法。


方法はこうです。

問題を解決と、アイデアを出そうとしています。

1.まず、その対象(モノやシステムや環境)のうち、増えれば増えるほど、問題を悪化させるもの(左の図の関係の要素)を列挙します。

2.逆に、問題を抑制するもの(改善するもの)を列挙します。

3.問題を増やしも減らしもしない属性は対象外。

こうすると、増大関係のリストができます。減少関係のリストが出来ます。ここまでやると、かなりアイデアが沸いてきます。つまり「○○な属性が問題を悪化させるなら、極力これを小さくするような改良をしてみればいいんだ。」ということになり、それが発想のトリガーリストになります。

アイデア出しにどうしても困ったら、「属性分析」を行ってみると意外とアイデアが大量に出せたりします。是非お試し下さい。



■補足(出展):

この手法には、優れた出展があります。中川先生(TRIZの日本の第一人者、大阪学院大学 教授)のTRIZホームページ、及び、USITセミナー等の資料に本格的な資料があります。

問題 (困ること) に関わる「属性」の分析: 「問題因子」と「抑制因子」(かなり下の方、4.3です。)
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2007年11月04日

技術システムの発展を予測するツール(技術進化のトレンド)

TRIZの中には、発明原理(技術的ブレークスルーの40パターン)のほかに、技術システムの進化を予測する「トレンド」という貴重な知識があります。

トレンド、というのは何か、というのを説明します。

1.技術はだんだん発展します。
2.技術分野や製品によって、具体な技術の内容は違います。技術が発展していく内容も様々です。しかし、各技術の進化状況を分析すると、中には似たような発展の仕方をしているケースがあります。
3.TRIZ研究者たちの活動により、技術の発展の仕方(技術進化のトレンド)として多くの事例に認められるパターンが、抽出され、31個(※)に整理されています。(※文献によっては20個、などの場合もあります。31個は、ダレルマンの本など。)

どのパターンも、なるほど、と思うような自然な技術進化です。多分、ベテラン技術者の方であれば、そのうちの何割かは、過去の業務経験から暗黙知的に認識されていると思います。

各パターンは3〜6ぐらいの段階で構成されています。



では、その31パターンには、どういう効能があるか。

技術部門のリーダが、自社の製品の技術を31の項目(31パターン)で分析し、その各項目は、どの段階まで進んでいるか、ということを分析します。すると、マックスまでいっている項目もあれば、進化度の低い項目もあります。その低い項目は進化させる余地が多いにあります。(最高までいっている項目は、非連続な技術体系へジャンプすることを待つか、自らジャンプさせます。ジャンプは、破壊的なイノベーションであり大変です。)

あるいは、9画面法などで要素技術の過去10年の発展量を分析したときに、その技術進化のトレンドとして31のどれが顕著であるかを把握します。そしてその発展と同じだけ、次の5年間で進化する、と考えて、要素技術の5年後を予測します。

このように、製品企画の視点で、特に有効だと思います。

しかし、たとえば、ハイテクベンチャーが、自社で開発したの先端的な実験装置を改良しよう、というときに、装置の運転性をどうすると向上できるか、と考えるときに、この31パターンを見てみると、装置のメカニズムを発展させるべき方向が見出せます。
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2007年11月03日

発明原理(TRIZ)とSCAMPER(CPS)の類似要素が意味するもの。(3)

TRIZとCPSの相違点に注目してみると次のようなポイントがあります。

まず、発想のトリガーリストは、「問いかけ」スタイルがいいのか、あるいは「単語や文 & 詳細説明」スタイルがいいのか。

これについては、「指示語にする」というスタイルも考えられます。(智慧カードは、指示語のリスト。)発案を引き出すにはどういう文スタイルがいいの、議論の余地がありそうです。

それから、何分野で、成立可能か、ということです。TRIZは技術アイデアをだします。CPSは広い分野ですが特にビジネスアイデアを出します。それ以外の分野でも、こうしたものが成立可能かどうか。

これについては「プロフィットモデル(収益構造)」のトリガーリストや、災害や遭難したときに生き抜く方法のトリガーリストというものなど、有用知識の創造を考えることにつながりそうです。


そして、「どのように使うツールであるのか」も考える余地がありそうです。TRIZの場合、矛盾問題に問題を整理して、マトリックスをおっていって、有効度の高いトリガー4つを抽出します。CPSの場合は、トリガーリストを集約した7項目で粗くチェックしてみて、それから詳細版で、そのグループにある問いかけで、更に発想をしていきます。この2つの方法には、一長一短があります。

直ぐにできるのはCPSのほうです。しかし、より思考のリソースを効果的に集中させるには、TRIZのほうが、機能的です。

CPSの48の問いがどういう問題にてきするのかを選ぶ「CPSマトリックス」が仮に作れたならばそれだけでもかなりの意味があります。



以上、TRIZとCPSの相違点から、ざっとディスカッション・ポイントを列挙してみました。

これについては、特に「新しいトリガーリストを作れるならば、どこの分野がいいのか」が興味深いと思います。
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2007年11月02日

発明原理(TRIZ)とSCAMPER(CPS)の類似要素が意味するもの。(2)

TRIZとCPSのトリガーリストの共通点から、一般化できる可能性のあるものを列挙するとこうなります。

1.分野ごとに、優れた事例を沢山集めると、そのアイデアのエッセンスには共通するものが見出される。

2.それを集約すると40〜50くらいにまとめることが出来る。

3.その集約したリストは、その分野におけるアイデア生成のトリガーリストとして有効に機能する。


これが仮に正であると、いくつかのディスカッション・ポイントがあります。

まず、どういう分野であれ、優れた事例を膨大に集めれば、アイデアのエッセンスには、一定の共通点が見出しうる、ということです。

これは必ずしも正しいとはいえない気がします。しかし一方で、これが絶対に成り立たない事例を見つけることも難しい。それだけ本がかけるくらいのディスカッションがありえます。

次に、パターンはどこまで集約できるのか、という点です。40〜50にまとめる。ということは、もっと多いエッセンスが見つかった場合には、それらを類似性をもとに集約する、ということです。エッセンスが200もみつかったなら、それを4,5こをもって一要素に集約すれば、エッセンスの量は40,50くらいに整備できます。

さらに、です。逆に、集約度を高めていけば、10や3くらいまで、エッセンスをまとめることが出来ます。それは一般には、極めて概念的になるだろうと思われます。そこまで集約したものは多面的にひろげるトリガーリストとしては、有効ではない、のかもしれません。このちょうど良いころあいはなぜ40や50なのか。ここも多いに議論の余地のあるディスカッション・ポイント。


実行面で言えば、もうひとつ、あります。それは、「一体、何個の優れた事例を集めれば、パターンリストを作るのに充分な数といえるのか」です。これが200万事例ないと無意味なのか、200事例でもそれなりにいいものができるのか、で、実行面はかなりかわります。


以上、共通点に見られるものから、議論点を列挙してみました。
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2007年11月01日

発明原理(TRIZ)とSCAMPER(CPS)の類似要素が意味するもの。(1)

TRIZの発明原理は、技術的ブレークスルーの40パターンのリストです。古今東西の優れた特許から、技術的なブレークスルーのエッセンスを集めて整備したもの。技術的な発想を引き出すトリガーになるものです。

これに似たものがあります。

CPS(創造的問題解決:オズボーンの創造技法を中心に、整備された創造に関する実用的な技法)のSCPAMERは、ビジネスアイデアの48パターンのリストです。日本では集約されて7つになっていますが、原典には48あります。(ブレスターのTOIカードは、それを独自和訳したもの。)発想を引き出すトリガーになるものです。

技術、と、ビジネス、という対比ですが、共に40〜50近い、トリガーリストで構成されているという類似点に、ここで注目してみたいとおもいます。

1.どちらも、世の中の広い事例をサーベイして、優れたもののエッセンスを集約していったこと。

2.どちらも、それらを40〜50のパターンにまとめたこと。

3.どちらも、その分野(技術分野、ビジネス分野)のアイデアを引き出す為のトリガーとなるものであること。


一方で顕著な違いをまとめておくとこうなります。

1.TRIZは、発明原理の名前の下に説明コンテンツが沢山あり、素人にはトリガーリストとして直ぐに使いにくい。CPSは、48を「問いかけのリスト」となっており、その問いかけリストがそのまま発想のトリガーになっている。(逆に、詳しい事例はついていない。)

2.TRIZは旧ソ連で生まれた。発明家・特許審査官のアルトシュラーが作った。CPSはアメリカで生まれた。広告代理店の副社長、優れたアイデアを出したことで知られるアレックス・オズボーン。(東・西、技術・ビジネス、モノ・コトの明確な対比構造がある。)

3.TRIZは、どの発明原理を適用するべきかを示すガイドがある。矛盾マトリックスをおっていくと、その状況に適した4つの発明原理が分かる仕掛けがある。CPSは、リストを上からなぞっていく。もしくは集約版で粗く問いかけて、その後に、深く詳細版に入る方法をとる。

こうなります。

この二つの違いは大変意義深いものを示唆しています。
posted by 宮城TRIZ研究会 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | TRIZとは&TRIZに関する考察

2007年08月17日

TRIZの各発明原理の記載回数が示唆するもの。

8月17日。TRIZのサイト開設に向けて準備を続けています。

その一環で、マトリックスのもつ情報を分析しています。
マトリックスとは:各発明原理が、どういう矛盾問題を解決するの役立つかを、39×39の行列で表現したもの。矛盾する2つの要素を縦と横の軸から選び、その交点をみると、発明原理の番号が書かれている。一つのセルには、たいてい、4つの原理が対応している。例外的に0〜3つの場合もある。)

マトリックスを分析してって最初に気がついたのは、各発明原理の記載されている回数には、相当な偏りがある、ということ。具体的な数値は、最下部のデータをご覧下さい。

もっとも多いものが400回以上も記載されているのに対し、最も少ないものはたったの19回。実に20倍以上の開きがあります。(尚最も多いのは、35:パラメーターの変更。最も少ないのは、20:有用作用の継続。)

これをグラフにしてみました。図1(クリックすると大きくなります。)

triz40hindo.jpg

縦軸:マトリックス内の記載回数
横軸:発明原理の番号(1〜40)

こうしてみると、特定の原理が飛びぬけて多いことが分かります。

これを、出現頻度順に並べてみました。さらに累積地も表示しました。図2

triz40hindo2.jpg

縦軸:マトリックス内の記載回数
横軸:発明原理の番号(1〜40)

こうしてみると、かなり頻繁に登場する発明原理と、かなり出番の少ない発明原理があることが分かります。

ここにはありませんが、円グラフにしてみて気がついたことがあります。
それは、上記のグラフの補助線で示したことでもあるのですが、

・上位10位の発明原理の登場回数は、全体の数の50%に相当する。
ということです。これはつまり、荒く言えば、TRIZで問題解決をするときに、統計学的に言えば、40の発明原理の知識をもっていなくても、上位10の発明原理だけ持っていれば、二回に一回は、解決策を発案できる、と解釈できます。きわめて荒い近似ではありますが。

さらに積算していくと、分かるのは

・上位20位の発明原理の登場回数は、全体の数の75%に相当する。
ということです。簡単に言えば、上位20の発明原理だけ持っていれば、統計学的には、4回中3回は解決策を発案できると、解釈できます。ここまでくると、かなり有効度が高いと感じられます。

発明原理が40もあっても、初心者の方には、多すぎてもてあましている。ということがあると思います。それをはじめは、上位10だけ、次は上位20だけ、と理解していけば、効果的なのではないでしょうか。

■上位1〜10
35:パラメーターの変更
10:先取り作用
1:分割
28:メカニズムの代替/もう一つの知覚
2:分離
18:機械的振動
15:ダイナミックス
19:周期的作用
32:色の変化
13:逆発想

■上位11〜20
26:コピー
3:局所的
27:高価な長寿命より安価な短寿命
29:空気圧と水圧の利用
34:排除と再生
16:部分的な作用または過剰な作用
40:複合材料
24:仲介
17:もう一つの次元
6:汎用性

さて、さらに下まで見ていくと、何が見えるでしょうか。
次は上位30位、を見ると、かろうじて累積数が90%をこえています。(正しくは、29位で)累積が90%をこえます。つまり、

・上位30位の発明原理の登場回数は、全体の数の90%に相当する。
ということです。これはつまり、発明原理を30番目まで知っておけば、統計的には、問題解決を10回中9回は出来ると解釈できます。ほとんど実用的には、たいていの場合、これでいける、といえるでしょう。

■上位21〜30
22:災い転じて福となす
14:曲面
39:不活性雰囲気
4:非対称性
30:柔軟な殻と薄膜
36:相変化
37;熱膨張
11;事前保護
25:セルフサービス
38:強い酸化剤

最後に残った原理は、以下です。

■上位31〜40
31:多孔質材料
8:釣り合い(カウンターウエイト)
21:高速実行
7:入れ子
5:併合
23:フィードバック
12:等ポテンシャル
33:均質性
9:先取り反作用
20:有用作用の継続

以上のような構図になります。


推測、でしかないのですが、荒い、きわめて荒い近似を元に、推測すると、発明原理がもし、さらに10続いて、全部で50あったとした、それまでの傾向からして、上位50は、全体の1/16〜1/20程度になると思われます。カード一枚あたりに直せば、各カード、実際に使うのは100回の問題解決で、1回未満、ということに。

発明原理がなぜ40か、ということの背景には実はこういう構造もあるのかもしれません。


.



付録:記載回数を数え上げたデータ

発明原理 マトリックスに現れている回数
1 232
2 222
3 128
4 75
5 35
6 85
7 36
8 44
9 26
10 272
11 49
12 32
13 139
14 83
15 161
16 98
17 87
18 162
19 161
20 19
21 37
22 84
23 34
24 92
25 48
26 139
27 122
28 231
29 118
30 66
31 47
32 148
33 31
34 105
35 412
36 61
37 60
38 48
39 77
40 96




(脱線)

智慧カードに、カード得点をつけるとしたら、
上位10のカードは1点
上位20のカードは2点
上位30のカードは4点
上位40のカードは8点
とするのもいいかもしれません。各カードの記載回数の少なさは、そのまま、その原理を使う曲面が少ないということ。そういうカードほど、それを使って発想発想できた場合は、高いポイントを付し、良く使う原理ばかりが使われるのを防ぐ効果がもたせられます。
posted by 宮城TRIZ研究会 at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | TRIZとは&TRIZに関する考察

2006年11月21日

USITオペレータ。技術系のアイデアチェックリスト。

TRIZ分野の話ですが、USITオペレーターという技法があります。TRIZは膨大な発明の分析からうまれた発明的問題解決の理論です。で、USITとはなにか。ざっくりといえば、やさしくしたTRIZです。TRIZは技術課題の解決策発想を行うものですが、エッセンスにしたUSITは企業課題全般について使えるツールになっています。

さて、このUSITですが、日本のTRIZの大家である中川先生(大阪学院大学、教授)により付加価値の高いものになっています。「USITオペレータ」です。USITで問題を分析して、さあ、アイデアを出そう、というときに、USITオペレーターという解決策生成技法を使います。一言で言えば、オズボーンのチェックリスト(SCAMPER法)と使い方が似ています。オズボーンがビジネス・企画系のアイデアチェックリストであるのに対し、中川先生のUSITオペレータは技術開発・企業課題のアイデアチェックリスト。

さて、そのチェックリストはなにか、といえば、5つのカテゴリーからなる”問い”であり、全部で32個あります。参考 TRIZホームページ

※一般の人にはなじみのない単語がいくつかあります。
「オブジェクト」「属性」「スーパーシステム」。
※また、用語が表している意味に深い背景のあるものも。
「有害」「環境」
※いずれの用語も、同じくTRIZホームページに説明があります。グーグル検索で「TRIZ」と「調べたい用語」を検索してみてください。中川先生のTRIZホームページ内の必要な単語にたどり着きます。

技術系の方は、ぜひ一度、上記サイトから、正式版をみてみてください。とても勉強になります。ここでは、完全引用する代わりに、技術系のアイデアチェックリストとして、私が言い回しを変えて使っているものを掲載します。(注意:原文に対し、大幅な加筆・加工をしています。”USITオペレータ”として文章を引用をされる場合には、TRIZホームページの原文を引用くださいますようお願いします。)



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
技術系のアイデアチェックリスト(42)
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「モノ」をチェンジ(8)

1. 何かを消去する、単純化する。
2. 何かを多数(2, 3, ...,∞個) に増やす。
3. 何かを分割(1/2, 1/3, ...1/∞ずつ)する。
4. 複数のものをまとめて一つにする。
5. なにか新しいものを導入する。
6. 周囲にあるものを導入する。
7. 外観や様子を変えたものを導入する。
8. 固体のものを, 粉体, 液体, 気体のものに置き換える。

「性質」をチェンジ(11)

1. マイナスを生じる性質を使わない、関係しないようにする。
2. プラスを生じる性質を使う、関与するようにする。
3. プラスを生じる性質をもっと強くし、マイナスを生じる性質をもっと抑える。
4. 形、大きさ、位置など、空間的な性質を新しく取り入れる、もしくは、いろいろな性質を部分や場所によって変える。
5. 季節、日、秒など、時間的な性質を新しく取り入れる、もしくは、いろいろな性質をさまざまなやり方で時間的に変化させる。
6. 姿、形、ありさま、外見を変える。
7. 内部構造を変える。
8. とても小さなスケールの空間的性質を変える。
9. とても小さなスケールの時間的性質を変える。
10. 対象とするもの全体の性質を向上させる。
11. 対象とするもの全体の機能を向上させる。

「機能」をチェンジ(14)

1. 何かのもつ機能を別の何かに担わせる。
2. 何かの持つ複合した機能を分割して、別の何かに分担させる。
3. 二つの機能を統合して、一つの何かに担わせる。
4. 新しい機能を導入する。
5. 何かの持つ機能を、大規模な機能にしたり、小規模な機能に変える。
6. 何かの持つ機能を別のところへ移動させる。
7. 何かの持つ機能を周期的に大きくしたり小さくしたりする。
8. 何かの持つ機能を長時間にわたる機能にしたり、短時間でおわる機能にかえる。
9. 何かに検出機能をつけてみる。
10. 何かに測定機能をつけてみる。
11. 何かに適応機能をつけてみる。
12. 何かに調整機能をつけてみる。
13. 何かに制御機能をつけてみる。
14. 今の機能を、別の物理原理を使った機能に変えてみる。

「組み合わせて」アイデアをチェンジ(6)

1. 出された複数の案について、ある機能はA案、別のある機能はB案といったかたちで、機能同士を組み合わせてみる。
2. 出された複数の案について、ある部分はA案、別のある部分はB案といったかたちで空間的に組み合わせてみる。
3. 出された複数の案について、ある時間はA案、別のある時間はB案といった形で、時間的に組み合わせてみる。
4. 出された複数の案について、ある仕組みはA案、別のある仕組みはB案といったかたちで、構造的に組み合わせてみる。
5. 出された複数の案について、A案に使われている原理とB案に使われている原理を組み合わせて、それを用いて一つの案を作ってみる。
6. 出された案について、より広い範囲で考えてみる。対象とするものと一緒になって働いている他の物はなんだろうか。それをふくめた、より大きな「全体」をなすシステム。その範囲で、先に出された案を組み合わせてみる。

「鳥の目・虫の目で」アイデアをチェンジ(3)

1. 出された案の中に使われている言葉を、一般的な言葉に言い換え、案を連想的に膨らませる。
2. 出された案の中に使われている言葉を、具体的な言葉に言い換え、案を連想的に膨らませる。
3. 出された複数の案を、階層的な体系に整理分類し、案を網羅的に出してみる。


※補足:このリストは、リスト開発者・中川徹教授(大阪学院大学)の許可を得て、筆者が加筆修正したバージョンです。原典の表現はこちらをご覧ください。
原典 http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jlectures/USITSol0209/USITSolTableFull020906.html
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2006年08月02日

複数のアイデアからスターアイデアへ。(Stuart Pugh コンセプトの進化と選択プロセス)

アイデアをどうやって絞り込むか。これはアイデアの評価に関係し難しい問題です。それを行う良い方法として「コンセプトの進化と選択プロセス」というものがあります。スチュアート・ピュー(Stuart Pugh)。

Pugh、コンセプトの進化と選択プロセス.JPG

本格的な方法は、別の機会に譲るとして、アイデア出しの技法ワークショップ用に、簡易版にまとめてみると次のような作業になります。(注:Pughの方法論からアレンジしています。)

1、アイデア群から、主要なアイデアを選びリストアップする。
6〜10のアイデア。
(類似していても独立したアイデアであるとしたいものはリストに。)

2、比続的良いものを選び基準アイデアとする。

3、自チームが重要と考える評価基準(クライテリア)を3つ定める。
デフォルトは、「ユーザの効能」「コスト」「実現しやすさ」。

4、クライテリアでアイデアを評価する。
基準アイデアに対し、優れているもの「+」、同等「S」、劣っているもの「−」。
ディスカッションを通じて得られる洞察も大切。

5、クライテリア毎に「+」がついているアイデアのエッセンスを統合し
スターアイデアを作る。
統合できない場合は最も良いものを採用。


なお、時間が許せば、別の「比続的良い」コンセプトを基準コンセプトとして同様の作業をします。3回できるとベストです。

(参考文献)
TRIZホームページ 
その1 19ページ
その2 5.4
MRIリサーチアソシエイツ(goldfire.jp)
その1 13ページ
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2006年07月17日

理想解、というものの考え方。

TRIZの理論の中に『理想解』という考え方があります。理想の解を次のように定義しているのですが、その意味するところはとても示唆にとんでいると感じます。

・理想性=効能/(コスト+害)
・発展の方向は理想性の向上する方向へ発展する
・最終的な理想解は、コストなし・害なしで機能する(効能をもたらす)こと


今日はTRIZ理論としての考察ではありません。ビジネス的な側面とアイデア出しの側面から、これが面白いと感じますのでそれを述べたいと思います。

アイデア出しの組織に持ち込まれるテーマは漠としたものであることが結構あります。どうしたら商品がうれるようになるか、そのアイデア。などといったものも良くあります。テーマを明確にしてから依頼してくださいといえることばかりではないのが現実だとおもいます。(余談:漠としたクライアントの依頼から具体的な提案をかえすのは、コンサルティングファームでいえば戦略系などでは求められるものと聞きます。)

持ち込まれたテーマがどうすると理想的な状態か、これはメンバー間であれこれと意見が分かれます。人間の多様性がアイデアの質と量を生むので意見が複数出るのはいいことですが、方向性そのものはあるレベルでは合意形成できている必要があります。このとき、理想性とは、効能をそのコストと害で割ったものと考えよう。それが極めて向上することを理想状態としよう。と。





。。

ビジネス面の話をします。優れたビジネスモデルがつぎつぎ現れます。最近の動向では、ドロップシッピングというビジネスモデルがあります。

■シャツシティー
 http://www.shirtcity.co.jp/
 デザインして買う(あなたの好きなデザイン・写真・言葉をTシャツに)
 デザインして売る(あなたの作ったデザインでWEBショップ。リスクなし、コストなし)

■ホンニナル出版
 http://www.honninaru.com/index2.cfm
 自前の資金ゼロで出版。在庫の心配なし。

これまで、オリジナル商品にはオーダー100個以上とか発注額20万円以上といったメーカー最低発注額がありました。ロングテールな消費動向の昨今、たくさん作り在庫しておく、というスタイルはある種の市場エリアでは本質的に好ましくないビジネススタイルです。これに対してドロップシッピングは、必要なものが必要な分だけ一小口から生産されます。オリジナルショップを持つにしてもリスクとコストが無く、売れたら諸経費を抜いてWEBショップオーナーは利益が手に入ります。これは理想性の意味では、コストと害(リスク)がかなりゼロに近く非常に理想性の高いビジネスモデルといえそうです。

いまのドロップシッピングは、ある種の高度な印刷技術で一品モノの商品をつくってみせているビジネスです。Tシャツ、マグカップ、本。そういったもの表面に個別のコンテンツを印刷、それがオリジナルの商品に。この先に、理想性をさらに上げるとしたら分母(コスト、害)はあまり下がらないでしょうから、分子(効能)が向上するだろうと思われます。今の技術は、平面もしくは複雑な形状の面への印刷、といったものですが、これが単に印刷ではなく、対象物を加工して立体的な形状を一品ごとに作り出す技術、つまり「立体構造の印刷技術」ともいえるものが出てくることも考えられます。

近くのショッピングセンターに行くと射出成型プラスチックのいすやCDラックなどがたくさんあります。たとえば、未来のドロップシッピングでは射出成型機が一品もののプラスチック立体構造物を作ってくれる。たとえば、私のデザインしたイス、僕のデザインしたCDラック、といった具合に。(現在は金型の製造などの非常に難しい問題がありますが、将来はデータに応じて可変な金型セットの開発や、光造形技術の革新で低コスト、安全、高速にデータのものを作ってくれる技術発展などがあるかもしません。)

「理想解」という言葉が含む示唆は非常に深い、そう思います。
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2006年07月14日

9画面法 『鳥の目虫の目で、現在過去をみる。で未来は?』

TRIZに、9画面法という思考方法があります。時間軸と空間軸(あるいは概念空間軸)の2つで新しい発想をしていく方法です。TRIZや技術課題、というキーワードを超えて、面白い思考方法だと思います。一般のアイデア出しに活用できる方法だと思いますので、ぜひ使ってみてください。

(以下の、出展は、USITセミナーテキストです。私の理解・解釈に基づく表現ですので多分に不十分なものがある可能性があることをご了承ください。)

3かける3のマス目を書きます。(アイデア出しのときに使うマンダラートと同じ)

横軸は時間軸です。(10年前、今、5年後)
縦軸は思考対象物の範囲(スコープ)です。(上位・相当物・下位)

6[過去・上位システム] 3[現在・上位システム] 7[未来・上位システム]
4[過去・  システム ] 1[現在・  システム ] 8[未来・  システム ]
5[過去・下位システム] 2[現在・下位システム] 9[未来・下位システム]

全ての升目を埋めるとこのようになります。数字に発想のコツがあると感じました。

まず真ん中の列です。ここに現在のことを書きながら整理します。
中段に、今考えている対象物を書きます。
下段に対象物の下位システム(構成要素)を書きます。
上段に対象物の上位システム(対象物を包含して全体として機能を効能を提供しているもの)

次に左の列に移ります。これは過去について。主に10年前を念頭に。
中段に、対象物の10年前の姿を書きます。
下段に、その下位システムを書きます。
上段に、その上位システムを書きます。

最後は右の列です。主に5年後を予測します。ここは下記込む順番が違います。
まず、上段のマス、上位システムを書きます。手始めに将来社会のキーワードを書きます。そして、5年後の上位システムの姿を予測します。
次に、中段のマス、対象物の将来の姿を描きます。結局ここを書きたいわけですが、ここにいたるまでの7つのマス目が優れた発想を広げます。
さらに、下段のマス、対象物の将来の姿の下位システムを描きます。簡単に言うと対象物の将来の姿を構成する構成要素やそれが持っている諸機能です。
ここがさらに、対象物の将来の姿を色鮮やかに描き出し、アイデアが具体的になります。

以上、9画面法という手法を紹介しました。ある意味、発想をめぐらしているときに自然と使っている頭の使い方です。それを意識的にすることで効果的に着想を得ることができます。



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例:大学の休講を知らせる掲示板、を追記部分で考えて見ます。
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現在の対象物(2006年)
 大学の中央にある休講をしらせる掲示板

現在の下位システム
 電子データを表示するディスプレイ
 表示板の保護カバーガラス
 装置を冷却するファン
 電子データを入力するケーブル
 電子データをインプットするPC
 電源装置

現在の上位システム
 掲示板
 講義の休講を申請する講師
 それを受け取り受理して承認する事務職員
 それを掲示データする作業をする職員(同一人物のことも)
 それを見て行動を変更する学生

過去の対象物(1996年)
 紙を張り出す掲示板

過去の下位システム
 掲示するビラ
 画鋲
 掲示面(緑の布を張った木板)
 鍵のかかるガラス扉

過去の上位システム
 掲示板
 講義の休講を申請する講師
 それを受け取り受理して承認する事務職員
 それを掲示する作業をする職員(同一人物のことも)
 期間が終わったものを確認してはがす職員(同一人物のことも)
 それを見て行動を変更する学生
 掲示板の前の一段高いステージ。(職員が掲示物交換作業であがる)

そして、ここから将来(5年後、2011年)のシステムを考えます。
将来の上位システム
まず将来社会のキーワードは、
・少子化で学生の大幅減。
・文科省の交付金がへり事務経費の大幅抑制。
・多様な属性の学生の存在(社会人学生、身障者、高齢者、外国人)
・地域市民への公開講座
・知的エンターテイメント産業の台頭
・人口減少
・省資源、省エネ、環境適合
・校舎設備の利用用途の拡大、利用時間の拡大
・わかりやすさ、効率、ユーザーフレンドリー
ぐらいが上げられそうです。未来の掲示板の上位システムとしては、
 掲示板
 講義の休講を申請する講師
 それを受け取り受理して承認する事務職員
 それを掲示データする作業をする職員(同一人物のことも)
 それを見て行動を変更する学生
となりますが、各々の状況は変わっています。
まず、講師は今よりももっと多様でフレキシブルな勤務体系をとるでしょう。客員教授などに人気講師がたくさん増えます。たとえば優秀なスポーツ選手や世界的なボランティア組織のリーダなど。大学のシステムにあまり慣れていない人、一年限りの講師がたくさん増えます。そうすると突然の休講の要望や毎週同じ時間に講義するという制度そのものが柔軟さを求められます。また、学生のほうも、講義の選択にバラエティーが増すと、一人の人がいくつもの掲示板(経済の3年の掲示板、工学の1年の掲示板、心理学の2年の掲示板)の情報を必要とすることになります。
多様な学生や市民が利用するようになるとますますユーザーにとって認識のしやすさが必要になります。これらの状況下でも使いやすい掲示板の上位システムであるでしょう。

で、いよいよ、未来の掲示板です。
上記のことを考えていなくてもいくつかアイデアは出ますが、ここまでくるとかなりアイデアが自然と出ます。まず、利用者としては、掲示板に自分が近づくで自分に合わせた表示内容に切り替わって欲しいですね。いくつもの掲示板を行ったりきたり、ではなく。これにはRFIDつきの学生証を掲示板が認識し、個人IDから必要な情報を掲示してくれる。本日の突然の休講に対しては、授業に出席をするためにここまで来たことを掲示板が認識して、出席を一回分カウントしてくれる。そして講師に送られる。(そして後の補講動画をWEBからダウンロードできるパスワードがその生徒には付与される。生徒は補講分は大学に行かずに受けることができる)
また、突然の時間変更を講師が望んだ場合に受講者全員に一斉確認をできる仕組みがつくことも考えれます。あまりに生徒が多いと無理ですが、小規模ゼミなどであれば、10人中6人が時間変更をYESといえば、講師の裁量で時間変更をできる。(逆に生徒から時間変更の依頼があれば、60%以上の希望者数になると講師は時間変更をうけいれないといけない。)という仕組みが考えられます。リアルの掲示板というよりも掲示板システムが、ですね。
また電子データを蛍光掲示板で表示することの電力もカットし、大きな白い壁面に、照明スポットがあたり影絵のようにそこに情報が表示されます。普段はライトが消えているか、建物内の照明として使われています。
こうなってくると掲示板は駐車場にでも食堂のテーブルにでも、あるいはトイレの壁面にでも表示できます。(スポットライトがその分必要になりますが。)学生の利便性は高くなりそうです。また、講義時間を忘れて食堂で話している学生にそれを認識させることもできそうです。外国人の学生には望む言語での表示もさせることはリアルな掲示板に比べて比較的容易です。

そして、将来の下位システム。
まず、学生の個別IDを認識する仕組み。
 掲示板エリアにリーダ
 学生の学生証に無線ID
それから、個別の情報を編集し、個人用掲示データを作成するPC(英語や中国語へも変換する)
それのデータをスポットライトの前にある自動可変投影フィルターに送る仕組みとフィルター装置
学生の携帯、講師の携帯からアクセスできる時間変更交渉用WEB掲示板サイト
休講でも大学に来てしまった学生の出席認定を行うシステム(学生のIDを読み取って)

こういったものが必要になります。いずれも既存のシステムで十分にできます。高度な統合力と情報処理力は必要でしょう。

以上、簡単に掲示板の5年先を発想してみました。これが必ずしも正しいとはいえませんが、9画面法を用いることで比較的スムーズに未来の掲示板を描くことができます。

(かつてローソンで未来のコンビニというアイデア募集がありました。アイデアプラントで応募しました。やはりそのときに同じように思考を展開していた、といま振り返るとそう理解できます。それを効率的にやる、という意味合いが強いと思います。特に7将来社会のキーワードを上げる、という部分を明確にしている点が優れているとおもいます。)
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2006年07月13日

TRIZとUSIT

USITトレーニングセミナーを受講し、TRIZの書物、説明会、ソフトツールなどから学んできたものを元に、ここで一度整理してみました。(以下のPPTファイル)

TRIZとUSITの位置づけ

ここに述べたことはあくまでも私の私見です。まだまだ学び始めたばかりで事実と異なる認識をしている可能性もあります。あらかじめご了承ください。
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2006年06月18日

TRIZ、3つの基本ツールの位置づけに関する考察

TRIZの3つの基本ツールはそもそも互いにどういう位置づけにあるのかを、考察してみたいと思います。TRIZの知識構造自体をアナロジーとして活用する際にこれは大きなヒントになると思います。

3ツールの位置づけですが、きわめてラフな言い方すると、私は次のように解釈しました。プリンシプルズは対象とする系の内部の(トレードオフを解決する)話であり、エフェクツは系の内部がどうであるかとは基本的に無関係に存在する外部の話、そして、プレディクションはの系の仕組みが今後どのような発展を見せるかという指針を与えてくれるもの、だといえるかも知れません。つまり整理すると以下の様になります。

(1)プリンシプルズは、内部資源に関するイノベーションのエッセンス。
(2)エフェクツは、外部資源に関するイノベーションのエッセンス。
(3)プレディクションは、未来や指針に関するイノベーションのエッセンス。

なおこれを経営学にあてはめてアナロジーを考えるならば、
(1)プレディクションは、経営資源の各項目のトレードオフを解消し、両方を向上させるうまいビジネスモデリングの方法を提供するもの。
(2)エフェクツは、企業を取り巻く外部環境(人口構成、ライフスタイルといった社会環境、産業構造、貿易、IT化などの技術革新、法規制、市場動向、業界動向、他の業界の動向)がもたらすものを”機会”の視点で分類したもの
(3)自社のビジネスモデルや業界、市場、社会が今度どのように変わっていくのか、あるいは変化に対応するためにどういう指針を持つべきか、多様な業種、多様な時代、からトレンドのエッセンスを引き出したもの

であると私はとらえました。内部を知り、外部をしり、そして来るべきトレンドを知る。そういうツールになるのかもしれません。

ちなみに蛇足ですが


地域の技術系企業の技術をデータベースにする際にはエフェクツの構造を活用することで、効果的なデータベースができると思われます。

地域の企業の技術シーズを収集するときに、「わが社はコンマ何ミクロンの研磨ができます」と記録されると「高精度の位置決めをしたい」というニーズが来たときに、必ずしもこの技術をうまくシーズ集から引き出せるとは限りません。数が少ないうちは、全部の技術を毎回見ればいいでしょうが、そうも行きません。

そこで、地域各社さんに、”エフェクツの観点で自社の提供できる機能に登録をしてください。”と依頼できたらならば、効果的な「提供機能」別にシーズが構成される有効なデータベースになるでしょう。この辺にも構想を膨らませてみたいと思います。
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2006年06月14日

Prediction 『技術システム進化の共通パターン(標準解、トレンド)』

TRIZの中の基本ツール3点セットのうちのひとつ、プレディクションについて紹介します。技術の発展は、分野や業種や個別の事例によって全く内容は異なるわけですが、その技術体系が長期的にどういうカタチへ発展していくか、ということを見ていくと、いくつかの共通した傾向が見られるそうです。TRIZではその技術を進化させていく思考の展開方法をパターン化して「プレディクション(予測)」という魅力的なツールの一部として提供しています。

なぜそうなるのか、自明ではない独創的な数パターンの内容はとても興味深いものがあります。この知識を持っておくと、目の前の技術が今後こういう感じになるだろうな、という予想ができるわけです。昔であれば長年生産現場にいたベテラン技術者が「おう、それは昔もおんなじような問題にであったぞ。その時はだな・・・」と繰り返し現れる問題の本質を「知恵」として伝承していって暗黙知を蓄積していました。(ちなみに、現在は長く生産現場にいることがそもそも難しい、ベテランたちの「知恵」が構造的に急速大量的に失われている、という状況があります。)「なぜかはわからないけれど、技術や社会には、ステージを変えて同じ問題は繰り返し現れる」ので、技術では分野ごとにその道のベテランがコンサルテイトできたわけです。それをもっと広げて、全技術分野を網羅しその中に含まれる共通傾向を抜き出して体系的にまとめたものがプレディクションだ、と私は解釈しています。具体的にその共通傾向を参考図書では14種類の観点から整理されています。(引用:参考図書99ページ、括弧部分は抜粋・加筆しています)

1、新しい物質の導入(内部→外部→環境→物体間)
2、改良物質の導入
3、モノ→バイ→ポリ(類似物)(単→2→多→複合)
4、モノ→バイ→ポリ(異質物)
5、物質や物体の細分化(モノリス→分割モ→液体粉末→ガスプラズマ→電磁界)
6、空間の細分化(モノリシック→空洞→複数空洞→毛細管多孔質→活性毛細管)
7、表面の細分化(平ら表面→突起ある表面→荒い表面→活性細孔の表面)
8、可動性の向上(不動→ジョイント→複ジョ→完全弾性→液体気体→電磁界)
9、リズムの調和(連続→パルス→共鳴モードパルス→複数パルス→進行派)
10、作用の調和(未調整→部分調整→統制→間欠)
11、制御性の向上(直接的制御→起動機構を介する→フィードバックシステム)
12、線構造の幾何学的進化(点→線→二次元曲線→三次元曲線)
13、立体構造の幾何学的進化(平面→円筒面→球面→複合面)
14、トリミング(削除)の増大(従来→オブジェクト削除→一部削除→削除)


文字で表すだけでなかなか意味するところが理解しにくいのですが、TRIZの本などにある事例をみるとどれも大変興味深いもので感心させられます。以上は、プレディクションの中に含まれる「トレンド」というものです。以下、プレディクションの基本となる「物質−場分析」と「標準解(あるいは標準発明)」を紹介します。

対象とする系を2つの物質とその間を満たす場がある、というモデル化を行います。作用するもの、されるもの、そしてその間をつなぐもの、というシンプルモデルです。そのときに「新しい物質を導入する」など76通りの改良方法が、発明解として明らかにされています。これらを一つ一つ当てはめることで、改良を行う切り口が見えてきます。

なお、この発明解と上述のトレンドは具体的な内容を見るとわかるとおり、「発明解のいくつかを段階的に並べたもの」=「トレンドのひとつ」という関係があります。

(参考図書:『革新的技術開発の技法 図解TRIZ』)



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(私見) 「物事が繰り返し現れること」について
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 世界を記述するような力学の方程式の解があるとしたら、物事が繰り返し現れる、というのは、ある意味、その解を時間に関してグラフにしてその振る舞いをフーリエ変換したものがその意味を示唆してくれるような気がします。
 有限区間の任意の関数は、三角関数の重ねあわせで記述できることになりますが、その中でもある種の周波数帯のものは非常にインテンシティーが強く、その成分が形成している周期が世の中に「なぜか繰り返し現れる特徴的な社会現象」となっているのかもしれない、とふと思います。全くの私見ですが。
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2006年06月11日

物理的矛盾、克服する4つの方法。「分離」

昨日紹介したマトリックスには、実は同一属性の交差セルには、発明原理の番号は付与されていません。同じ属性のもの同士なので、そもそもそこにはAとBのトレードオフ、ということがありません。ですが、このマトリックスの興味深いところは、縦軸の属性が「改善されるもの」で、横軸が「悪化してしまうもの」という考え方である点です。かならずしも「重さ」が改善する、とは”重さが軽くなる”というわけではないようです。

そうするとわかることは、遠くに届くようにあるものの”長さを長くしたい”と同時に、移動時にはそれがコンパクトなほうがいいので”長さを短くしたい”ということがありますが、このときには、マトリックスの同一属性同士の交差セルにも、解くべき課題がある、といえます。(改善特性は、「長さ」が長くなる。悪化特性は「長さ」が長くなる。=持ち運びには短くしておきたい)では、それはどうなるのか。こういう同一属性同士が、Aであってほしいが同時にAでなくあってほしい、ということがあるのをTRIZでは「物理的矛盾」と呼んでいて、これを克服するのに4つの方法を提案しています。「分割」もしくは「分割の原則」と呼ばれています。表現や順番は書物などにより異なるようです。ここでは先日セミナーで伺ったメモを元に表現してみたいと思います。

1、時間で分離 
   仕事もしたいし遊びたい。午前を仕事、午後を遊び。
2、空間で分離
   プレゼンのときに前だけ暗く、後ろを明るく。といった対応。
3、下位概念・上位概念へ移行する
   プロジェクタースライドをやめる。明るくても見えるプロジェクターの開発。
4、システムとその構成要素で分離。
   柔らかくないといけない、同時に硬くないといけない。
   戦車やブルドーザーのキャタピラ。やわらかいとだめだが、
   全体はフレキシブル。
   構成要素は硬いが、システムとしてはやわらかい。
(4つ目は「相変化を利用する」とされることも。
 液体が固体になる、形状記憶合金、など)


これは、技術的なものだけではなく、日常生活の課題解決への発想の切り口などにも応用が聞きやすいものだと感じています。アイデア出しに困ったらぜひ一度使ってみてください。





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以前の記事に、分離原理について、中川先生のインターラボのコメントを引用したものがあります。再掲します。この考え方だけでも随分いろんな局面で課題を乗り越えられそうです。
■■■■■■■■■■■
二律背反、にっちもさっちもいなかい状況が、解決できる。
「分離原則」と呼ばれ、次の3段階で行う。
「(1)対立する要求を吟味し、それらを空間、時間、
またはその他の条件で分離しなさい
(2)分離できたら、分離した状況でそれぞれの要求を完全に
満たす解決策を作りなさい。
(3)そして、両者を統合して用いなさい。」
大抵の問題で(1)(2)は比較的容易に進むが、(3)で
はたと困る。この段階に、それぞれの分離条件に応じて、
多数の発明原理が有効であることが知られている。
発明原理をうまく適用すると、矛盾が鮮やかに解決される。
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2006年06月10日

Principles 『40の発明原理』

TRIZの初心者むけツールセット、と私が位置づけているものの一つ目、プリンシプル。膨大な特許から共通する発明のエッセンスが抽出され、それを集約して40通りのスタイルに、TRIZの研究者は纏め上げました。「40の発明原理」と呼ばれます。1番の分割原理、から始まり、最後40番は複合材料原理まで、独創的な40の原理で構成されてます。過去の叡智である特許のエッセンスを集約してできたものなので、ほとんどの困難な技術課題はこのどれかの方法が解決の示唆を与えてくれる、というものです。

アイデア出しのときに、この40の発明原理をアイデアのチェックリストとして活用しても面白いと思います。ブレストの考案者であるオズボーン氏がアイデアを得るために「7つのチェックリスト」というアイデア出しの切り口リストを作っています。”大きいものを小さくしたらどうなるか”などの問いかけリストです。プランニング系のアイデア出しにおいて、この7つの問いを行うことで大体これまでのアイデアは出される、というものです。技術系の課題のアイデア会議において、オズボーンのチェックリストではなかなか具体的な展開が難しいのですが、この”40の発明の切り口”を疑問系で問いかけてみると、そこに新しい着想を得られる、そんな気がします。

個別にどんな原理なのかはいづれ紹介したいと思います。TRIZがパワフルなツールだと思うのは、40個の切り口をどういう技術課題の時にはどれを使うと効果が得られやすいか、ということをマトリックスのカタチで示されていることです。もしそういう指南がついていなければ、技術課題に出会った人は、40個の原理を端から試してみないといけません。それがないのです。

対象となる技術課題を39の特性であらわしています。この39の選び方も独特で必ずしも自明ではない構成であり興味深いです。この39をタテ・ヨコになれべてそのマトリックスの中に、4つの数字(1〜40)がその課題に一番適した順に書かれています。縦は改善したい特性、横はそれによって悪化してしまう特性。その交点に、両方を改善するための発明原理がある、という構成です。TRIZのツールの中でも、コレだけでも相当多くのことができそうで、大変興味深いものです。
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2006年06月09日

TRIZ。技術的課題を解決する魅力的なツールセット。

TRIZ(発明的問題解決理論)を勉強しています。書物で見ると非常に多様な知識セットを含む理論で、何から使うとうまくいくのか、初心者にはなかなか判断がつきにくそうに見えます。そこでこれまでに人から教えてもらったことも踏まえて、私なりに少しまとめてみたいと思います。

本質的な課題を提示されたときに「コレとコレをこういう切り口で使えば効果的な解決策が得られる」という「ツールの選び方・使い方(ツールボックスの運用方法)」を。(※1)

まず、豪華フルセットではなく、入門者向けツール・コンパクトセット的な道具箱で話を進めます。ここには以下の3つの道具が入っています。
Principles『(発明の)原理』を提示してくれるツールです。
Prediction『(進化の)予測』を提示してくれるツールです。
Effects『(望む)効果』をもった技術を提示してくれるツールです。
どれもすばらしいデザインの魅力的なツールです。これらを今後、折に触れて紹介していきます。記事としては飛び飛びになります。

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2006年05月17日

TRIZとは

Q)読み方は?
A)英語のtreeの複数形と同じものが一般的です。
カタカナで表記すると、「トゥリーズ」です。
「トリーズ」と発音するかたもおられます。

Q)どういう意味?
A)直訳すると、「発明的・問題・解決・理論」という意味をもった言葉の頭文字をつなげた言葉です。
もともとは、ロシアで開発された理論で、ロシア語で
「セオーリア・リシェーニア・イズブレタチェルスキフ・ザダーチェ」
といいます。
TRIZを意味するロシア語(キリル文字)はТРИЗです。
フルに書くと теория решения изобретательских задач です。
この言葉を英語表記でつづった頭文字がT・R・I・Zになります。

なお、同意味を英語にした場合は、その頭文字をとるとTIPSとなります。TRIZ関連の文献では、TIPSという言葉も見られます。現在では欧米でもTRIZを使うほうが主流のようです。

Q)一言で言うとどういうもの?
発明、という優れた知識は特許という形で世界中のものが形式知(書面)になっていて誰もが閲覧することができます。アルトシュラーというロシアの特許審査官(後にTRIZを開発する人物。本人も優れた発明家。)が膨大な特許を分析した際に特許には、分野をこえ、時代をこえ、繰り返し現れるパターンがある、と気がつきます。彼はそれらをエッセンスへと集約してゆき、有効な知識セットを構築していきます。その知識セット(TRIZ理論)によると、世の中の99%の発明は、40のパターンのいづれかもしくはその複合であるとされています。(40の発明原理)。また、個別の技術の進化自体はイノベーションの繰り返しだとしても長期的に見ると技術進化トレンドには傾向がある。14(〜20)のパターンである。とされています。(技術進化トレンド)こうした発明のエッセンスを抽出した知識セットがTRIZ理論です。これらは技術課題のブレークスルーを望むときに強力な発想ツール(あるいは、開発コンセプト創出ツール)として活用することができます。

Q)経緯・実績は?
ロシアで開発されました。冷戦終了後、TRIZの専門家は欧米に渡ります。アメリカなどで展開し、USITなどの手法も開発されます。90年後半に日本・アジアにも普及します。当時は書物の乏しさ、言語の壁などが大きく、難解な理論として受け止められた経緯もあります。現在日本国内にもTRIZ専門家、活用実績が豊富になり、近年急速に展開が見られるようになっています。世界的には、実は韓国がTRIZを大きく活用し高い成果を上げています。韓国からの留学生の話では、MOT系の大学ではTRIZは日本に比べてずっとポピュラーな知識となっているそうです。日本での実績は、パナソニック系での活用が有名です。
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2006年04月04日

『TRIZ』発明的問題解決の理論(自主レポート)

ロシアのアルトシュラー氏が生み出したシステマチックなイノベーションの理論があります。当初、私はアイデアプラントでのアイデア出しの技法開発のために勉強し始めた理論ですが、この理論「TRIZ」にかなり深い可能性を感じて、最近独学でこの理論の勉強をはじめました。幸い、インターラボ(産学連携分野の無料雑誌)にTRIZの大家の中川先生の連載がありそれが非常に分かりやすく助かっています。自主レポートとして、連載第一回目の内容を以下、簡単にまとめました。これから業務において専門的に活用したいと考えてある種の構想を練っています。

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自主レポート 『TRIZ』
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(出展:インターラボ 2006年1月)

■TRIZの意味
発明問題解決の理論を意味する
ロシア語の頭文字をつづったものを英語表記に直したもの。

■発祥
旧ソ連のアルトシュラー(1926-1998)が50年にわたり
発展させ確立させた。

■日本での普及
本格的に紹介されたのは1996年〜1998年。
現在では米・欧で国際会議が毎年開催されるようになった。

■TRIZの情報源
(日本)(大阪学院大学 中川教授、編集)
TRIZホームページ www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/
(米国)
TRIZ Journal  www.triz-journal.com

■入門書的な本
三菱総研編著(1999)『革新的技術開発の技法:図解TRIZ』日本実業出版社

■教科書的な本
Darrell Mann、中川徹監訳(2004)
『TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新』創造開発イニシアチブ

■TRIZのそもそもの発想。
アルトシュラーが特許関係の仕事で多数の特許を調査する中で、
「特許のアイデアのエッセンスには、似たパターンがしばしば現れる。
もしそのパターンを抽出して学べば、誰でも発明家になれるだろう。」
と考えたもの。

■特許から抽出したそのパターンが、発明原理。
40の発明原理、サブ原理レベルでは、約100項目を抽出・整理。
分割の原理、分離(摘出)の原理、局所的性質の原理、などから
複合材料の原理など、いろいろ。

■抽出は直感的になされている。
TRIZはボトムアップに、事実を整理していって次第に仮説を形成し、
それを実地応用で検証しながら高めていく(深めていく)という
帰納的・実証的アプローチで形成してきた。
この40の発明原理はその後ずっと使われ、
書く原理の含蓄が深まり、多数の事例が集められている。

■そのほかの、特許の分析からまとめられたもの。
科学技術の現象・原理や諸技術を網羅したもの
(Effects:物理・化学的効果データベース)
機能目標から実現手段を調べるデータベース
技術の進化・発展の方向性をまとめたもの(進化のトレンド)

■TRIZでのそれらの知見の使用方法
問題を抱えている技術者たちの視野を広げ、
自分の専門知識だけでなくて、他の科学技術分野、
他の産業などでの知識を有効に使えるようにするもの。
「誰かがどこかであなたの問題をすでに解決している」
というのを警告としてではなく、「解決の鍵」として
使おうとするもの。
自分の問題の本質が解決されているのであって、
実際の問題の解決策は、状況によっていろいろに
変化が必要。そこに自分の創造がある。

(私見)TRIZと歴史学の思想的根底には、同じ温故知新があるように思えます。

■デボノの「水平思考」
デボノの水平思考と基本的には同じ。
具体的な知識ベースを蓄積し活用する点で異なる。

デボノの水平思考

■発明のアイデアを出す方法
技術上の困難な課題に対して、確実に創造的な解決策を
作り出す方法としてTRIZは開発された。

■使う場面
第一には、将来の製品やサービスを構想する場合。
9画面法で、現在の製品やサービスの上位と下位のシステムを考え、
過去・現在・未来の発展を、「進化のトレンド」の知識などを
つかって考える。
第二には、技術的な問題(困ったこと)に遭遇した場合に
解決策を考える場面。
一つの製品・サービスの初期の企画・設計・開発の段階だけでなく、
製造の段階でも、保守の段階でも、要するに技術的な
問題点を解決する、そのための基本方針を作るのに使う。

■「発想法」「発明のノウハウ」との違い
TRIZでは、問題の設定、問題の分析、解決策の生成など、
きちんと段階を踏んで問題解決をします。
知識ベースを使うこと。
しっかりした技術的思想に基礎があること。

■問題の設定、分析の段階の方法の特徴
問題を広く体系的に捉え、問題の根本原因を考えて、
その問題の技術システムのメカニズムを理解しようとすること。
システムの機能と属性に関する分析をきちんとすること。

■解決策のアイデアを出す段階にも方法をもつ。
知識ベースに蓄積した「発明の原理」や「進化のトレンド」
などの中から、分析結果に応じて有効そうなものを
ヒントとして提示することが、もっとも典型的で有効なやり方。
TRIZの機能分析のやり方の一つに「物質・場分析」と
呼ばれるものがあり、その分析結果に応じて出されるヒント集を
「76の発明標準解」と呼ぶ。

■TRIZでもっとも特徴的な方法。
問題が持っている本質的な困難さを「矛盾」として明確にし。
その上で(妥協や最適化でなく)きちんと解決すること。
TRIZでは「一つの側面を改良しようとすると、別の側面が悪化する」型の
矛盾に対してはこれらの側面の組に対して今までの発明者たちが最も多く
使用した発明の原理を抽出しており「アルトシュラーの矛盾マトリックス」
と呼んで公表している。
また「一つのシステムの一つの側面に対して、正・逆の互いに対立する
要求が同時である問題」(TRIZではこれを物理的矛盾と呼ぶ)を
確実に解決する方法を持っている。

■二律背反、にっちもさっちもいなかい状況が、解決できる。
「分離原則」と呼ばれ、次の3段階で行う。
「(1)対立する要求を吟味して、それらを空間、時間、
またはその他の条件で分離しなさい
(2)分離できたら、分離した状況でそれぞれの要求を完全に
満たす解決策を作りなさい。
(3)そして、両者を統合して用いなさい。」
大抵の問題で(1)(2)は比較的容易に進むが、(3)で
はたと困る。この段階に、それぞれの分離条件に応じて、
多数の発明原理が有効であることが知られている。
発明原理をうまく適用すると、矛盾が鮮やかに解決される。
posted by 宮城TRIZ研究会 at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | TRIZとは&TRIZに関する考察